環境管理会計手法のひとつ、マテリアルフローコスト会計(Material Flow Cost Accounting、以下MFCA)は、ドイツのIMU(Institut für Management und Umwelt, Augsburg Germany)で開発され、2000年に日本に紹介されました。
MFCAは、『マテリアル(原材料、資材)のロスを物量とコストで“見える化”する』手法として、マテリアルロス削減の取り組みに効果が大きいと高く評価され、ここ数年、急速に普及を始めています。マテリアルロスの削減は、その使用量・購入量を削減し、原材料費低減に直結するだけでなく、資源効率を高める等の環境負荷低減の取り組みになります。このようにMFCAは、企業に経済効率向上(コストダウン)と環境(資源)効率向上を同時にもたらします。
日本では経済産業省が主導して日本国内でのMFCAの開発と普及を図ってきましたが、MFCAの国際標準化も日本から提案されました。その結果2008年に、国際標準化機構(International Organization for Standardization)の中の環境マネジメントについての技術委員会(Technical Committee)、ISO/TC207の中にMFCAの規格を検討するワーキンググループ・WG8(MFCA)が設立されました。ISO/TC207/WG8におけるMFCAの国際標準規格の検討では、提案国日本が議長:國部克彦氏(神戸大学大学院教授)、幹事:古川芳邦氏(日東電工株式会社)、幹事補佐/日本代表エキスパート:立川 博巳(プロファーム ジャパン株式会社)を務めるとともに、日本代表のエキスパートとして中嶌道靖氏(関西大学商学部教授)、二神龍太郎氏(キヤノン株式会社)の両名が参加する等、日本が主導してMFCAの国際標準規格を進め、2011年、ISO14051(MFCA)として国際規格化されました。
MFCAは、これまで時間生産性向上による競争力強化に取り組んできたモノ作りに、資源生産性向上の可能性と、環境面と経営面の相互作用を生み出します。当初は、マテリアルロスが最小限になるように設計された工場や設備、生産システムも、多品種小ロット化等の事業環境変化や製品や技術の変化が進む中、知らないうちにマテリアルロスが大きくなっていることがよく見受けられます。マテリアルロスを物量とコストで管理していない場合、マテリアルロスの増加の問題をモノ作りの管理者、経営者が把握できません。MFCAは、資源生産性向上の可能性と価値を、モノ作りに関わる企業の管理者・経営者に目覚めさせると期待される21世紀の管理手法です。